実行予算

実行予算は、契約が決まったあとに「実際に使ってよいお金の内訳」を社内向けに決める表です。
見積より現実寄りで、発注や仕入れ、工程、人員計画の基準になります。ここが甘いと、利益がすぐ消えます。


何を決める?
・工事項目ごとの原価上限(材料・手間・外注)
・発注先の当て(第1候補/第2候補)と単価メモ
・前提条件(夜間・搬入制限など)と含む/含まないの線引き
・予備費(バッファ)と変更対応のルール


作り方(5ステップ)
・契約の整理:契約金額、工期、図面Ver、仕様、変更条項を確認
・数量の確定:最新の数量拾いに合わせる(控除・端数ルールも統一)
・原価の配分:各工種へ材料費・労務費・外注費を割り付け
・単価の当て(値入れ):社内単価・相見積・歩掛×労務単価で根拠づけ
・帳尻合わせ:目標利益と突き合わせ、過不足を調整(VEや発注条件で吸収)


かんたんな例(数字で見る)
・契約金額:5,000万円
・目標利益率:12% → 利益目標=5,000×0.12=600万円
・原価上限=5,000−600=4,400万円
・原価の配分(例)
・躯体:1,800万(材料1,100/労務600/その他100)
・内装:1,050万(材料700/労務300/その他50)
・外装:420万(材料280/労務120/その他20)
・共通仮設:520万
・現場管理:420万
・予備費(変更・雑工):190万
→ 合計 4,400万(原価上限と一致)
ポイント:
契約金額 − 原価上限 = 利益が守れる配分になっているかを毎回確認。
足りない場合はVE(代替材・工法見直し)や発注条件の工夫で吸収。


できる/できない(線引き)
・できる:原価上限の設定、発注の目安、社内の意思統一、変更時の再配分
・できない:顧客提出用の見積にそのまま流用(目的が違う)、最終価格の保証


メリット / デメリット(正直に)
・メリット
利益の守りが固くなる(使いすぎ防止)
現場・購買・積算の判断がそろう
設計変更が出ても、どこで吸収するかが早く決まる
・デメリット
初期に手間がかかる(数量・単価の見直し)
数字を放置すると現実とズレる
→ 対応:週次・月次で実績とのズレを点検、必要なら更新。


よくある失敗と対策
・数量が最新でない
 → 図面Verと改定日を表頭に明記。差分は色付けで反映。
・配分が感覚頼み
 → 数量×歩掛×単価で根拠を残す。相見積は2社以上。
・予備費ゼロ
 → 少なくとも**2〜5%**は確保(案件の不確実性で変える)。
・共通仮設・現管費が足りない
 → 工期・人数・リース料からボトムアップで算定。
・VEの検討が遅い
 → 最初の配分時にVE候補リストを作り、優先順で当てる。


チェックリスト(提出前に7つ)
・契約金額・目標利益・原価上限が一貫している
・数量は最新の拾いに一致、単位・端数ルールは統一
・単価の**根拠(出典・日付)**が記録されている
・共通仮設・現管費・雑工・運搬が抜けていない
・予備費を確保(案件の難度に応じる)
・変更時の更新手順(誰が、いつ、どこを)が決まっている
・ファイル名に案件名・図面Ver・日付を入れた
管理テンプレ(最小セット)
・項目|数量|単位|材料単価・金額|労務歩掛・単価・金額|外注金額|小計|根拠(見積No/出典/日付)
・共通仮設|現場管理|予備費|合計|原価上限差(±)
・注記(前提・除外・VE候補・発注条件メモ)


変更が出たときの運用
・変更指示を記録(日時・図面No)
・差分拾い(数量・仕様の影響範囲を広めに確認)
・該当項目の再配分(予備費→不足分はVEや他項目で調整)
・版アップ(Ver.1.1 → Ver.1.2…)と変更履歴を残す


FAQ
Q1. 実行予算だけ作成を依頼できますか?
A. 可能です。前提資料(契約・図面・見積・社内単価)をご提供ください。
Q2. どのくらいの予備費が妥当ですか?
A. 案件の不確実性によります。小規模改修で2〜3%、仕様が流動的なら3〜5%を目安に。
Q3. 材料価格が途中で上がったら?
A. 材料だけ再計算し、配分を更新。大きい場合はVE候補を実行します。
Q4. 外注見積が高止まりして合わない時は?
A. 数量・歩掛・条件を再確認。発注条件(まとめ発注、納期調整)での圧縮も検討します。
Q5. 顧客向け見積と何が違う?
A. 実行予算は社内の原価管理用。対外向けの価格提示や契約条件は別資料です。