歩掛
歩掛は、作業1単位(例:1㎡・1m・1本)を施工するのにどれくらいの手間(人時)や機械時間が必要かの目安です。
数量をお金に変えるときのものさしで、見積・実行予算・工程の根拠になります。
何に使う?
・見積の下ごしらえ:数量 × 歩掛 × 労務単価 = 労務費の素案
・工程・人員計画:総人時 ÷ 稼働時間 = 必要人数/日数
・査定・説明:金額の理由を数字で説明できる
基本の考え方(式)
・労務費 = 数量 × 歩掛(人時/単位) × 労務単価(円/人時)
・機械費 = 稼働時間(h) × 機械単価(円/h)
・合計概算 = 労務費 + 材料費 + 機械費 + 諸経費
※歩掛は工法や条件で変わるので、現場条件に合わせて補正します。
種類(おさえておくとラク)
・労務歩掛:人の手間だけ(例:クロス貼り 0.25人時/㎡ など)
・人機歩掛:人+機械の組合せ(例:吹付け塗装 0.18人時/㎡ + 機械0.02h/㎡)
・混合歩掛:上記をまとめて1式で持つ社内基準
数字は会社ごとに違います。以下の数値例はあくまでイメージ。必ず自社の標準や直近実績を優先してください。
補正の考え方(代表例)
・狭小・足元悪い:作業効率↓ → 歩掛を増やす(例:×1.10〜1.25)
・高所・高層搬送:運搬・待ち時間増 → ×1.05〜1.15
・夜間・騒音制限:段取り増 → ×1.15〜1.30
・同時作業が多い:干渉・待ち増 → ×1.05〜1.15
・反復性が高い:同一間取りの量産 → ×0.90〜0.95(効率↑)
※根拠をメモ(なぜ補正したか)— 後で説明するときに効きます。
計算例(数字でイメージ)
・例1:クロス貼り(労務費)
数量:800㎡
基準歩掛:0.25人時/㎡(例)
労務単価:3,500円/人時
労務費= 800 × 0.25 × 3,500 = 700,000円
条件:夜間作業(×1.20の補正) → 840,000円
総人時= 800 × 0.25 × 1.20 = 240人時
人員計画(1日8h×3人)→ 240 ÷ (8×3) ≒ 10日
・例2:シーリング(m単価の作業)
数量:1,200m
歩掛:0.05人時/m(例)
労務単価:3,800円/人時
労務費= 1,200 × 0.05 × 3,800 = 228,000円
狭小補正(×1.15)→ 262,200円
・例3:工程への落とし込み
総人時:200人時 / 1日8h / 4人 = 6.25日 → 余裕見て7日計画
重要:**数量の取り方(控除・端数)と歩掛の前提(誰が何人でどの道具)**をセットで残す。
できること/できないこと(線引き)
・できる:労務費の試算、工程・人員の目安、見積の説明根拠
・できない:最終価格の保証、現場全体の工程確定(他工種の影響で変動)
メリット / デメリット(正直に)
・メリット
案件ごとの数字の整合が保てる
説明責任(社内・客先)が果たしやすい
改修時に差分計算が速い
・デメリット
数字が古いままだと現実とズレる
補正が主観的だと人によって結果が変わる
社内にブラックボックスができると属人化
→ 対策:定期更新(四半期など)、補正ルールの文書化、出典と日付の記録。
よくある失敗と対策
・出典不明の歩掛を使う
→ 社内表に出典・版・日付を必ず記載。
・単位を取り違える(mm↔m、㎡↔m)
→ 歩掛の単位を欄名に固定表示、自動換算セルを用意。
・工法混在で平均が崩れる
→ 工法ごとに歩掛を分ける(貼り分け、下地差)。
・補正が盛りすぎ/足りない
→ 写真・図面の根拠メモを残し、類似案件に合わせる。
・人員配置が机上の空論
→ 実働班の標準編成(例:2人1組×2班)で検算。
チェックリスト(提出前に5つ)
・歩掛の出典・版・日付を記載
・単位(人時/㎡、人時/m 等)が正しい
・補正理由を明記(夜間×1.2 等)
・数量の前提(控除・端数)が一致
・再現性:誰が見ても同じ数になる
・使い回しテンプレ(記録用の最小セット)
・項目名|単位|基準歩掛|補正係数|結果歩掛|労務単価|労務費|根拠メモ(写真/図面No/日付)
FAQ
Q1. 歩掛はどこから決める?
A. 社内実績+協力会社ヒアリングを基準に。なければ外部資料を“たたき台”にし、案件を重ねて自社化します。
Q2. 補正係数はどう決める?
A. 作業妨げ要因(狭小・夜間・搬入制限・干渉)を洗い、写真・図面根拠を添えて係数を設定。毎回、同条件なら同じ係数に。
Q3. 人件費が上がったら?
A. 歩掛はそのまま、労務単価を更新。歩掛自体は“作業効率”の指標です。
Q4. 外注見積と合わない時は?
A. 歩掛か単価、どちらがズレたかを切り分け。前提条件(下地・段取り・範囲)を合わせて再計算。
Q5. 改修でバラつく時は?
A. 小分け集計(部屋別・工法別)で拾い、歩掛も複数パターンに分ける。